PROJECT

全日空商事は、除菌・消臭機能を一つにした除菌消臭剤「A2Care」の総販売代理店として、業務用のみならず、オフィス、医療施設、教育施設などへの展開に加え、専門店・雑貨店を通して一般家庭への提供を担っている。そう聞くと、なぜ全日空商事がと驚かれるかもしれない。
「以前から、ANAの機内では客室乗務員が機内清掃用として使うために、除菌剤と消臭剤がそれぞれ導入されていました。しかし、機内のスペースは限られているため、容器が2つに分かれていると搭載効率が悪くなり、作業効率も悪くなります。そこで、除菌剤と消臭剤を1本にした除菌消臭剤の導入が検討されることになり、日本の除菌消臭剤約100種類をベンチマークしました。その結果、効果が高く、長時間密閉された室内でも安心して使え、安全性が高い商品ということで採用されたのが、A2Careだったのです。」と、現在A2Careの営業担当である中込は語る。
実際にANAの機内に導入してみると、客室乗務員から高い評価を得た。液剤自体が無臭のため、芳香剤のような特殊な臭いがなく、それでいて国際線のロングフライトなどでの定期的なトイレの清掃でもしっかり嫌な臭いを消してくれるからだ。
「A2Careは99.99％水でできており使い心地が自然で、ANA機内で採用されていることから高い安全性が証明されています。従来他社製品のような界面活性剤を使っていると、衣類やカーテンなどが黄ばむことがありますが、A2Careはファブリックや金属、プラスチックを傷めることもなく、安心してお使いいただけます。小さなお子様やペットのいる家庭でも活用していただけます。」
ANA機内で高い効果が確かめられたことで、全日空商事としてはその実績をもとに、新規販売チャネルの拡大、マーケティング強化による製品の拡販、そしてA2Careの世界展開を目指すこととなったのである。

全日空商事は、A2Careの製造を行っていた企業と合弁会社を設立し、2016年6月から本格的な営業活動を開始した。2017年に入社した中込は、入社後すぐにA2Careの営業を担当することになった。担当になってすぐ中込に任されることとなったのが、羽田空港国際線のお手洗いへのA2Care導入という、大きな案件であった。
「羽田空港国際線ターミナルでは、お客様のお声をもとに施設・サービスの改修を随時行なっていました。当時、お客様のお声に『トイレの臭いが気になる』などのご意見が目立つようになりました。そこで、臭い対策としてA2Careの導入を2018年6月に初めて提案しました。また、羽田空港の国際線には駐車場やゲート内を含めてお手洗いが108カ所あります。そこにA2Careを噴霧する器械を設置しタイマーを設定することで、24時間自動で最適な噴霧をすることができるという新たな提案も行いました。」
新規の案件だったため、施設側の要望を丹念にヒアリングし、機械も施設側の仕様に合わせ作り替え、日本を代表する国際空港にふさわしいデザインなども設計し直した。
「国際空港なので多国籍の方々が利用されますから、どのようにしたら安全に使用でき、しかも施設側に負担がかからずに高い効果が得られるのか。一つひとつ手探りで何度も協議を重ねて仕様を決めていきました。」
施設の意見を取り入れていくといっても納期との兼ね合いがある。また、実際に器械を作るメーカーの協力も欠かせない。たとえば、従来の装置は高さがあまりないものだったが、それでは利用者の目につかず、つまずく危険があった。そこで、ある程度の高さを持たせ、なおかつ倒れないようにするための工夫が必要になった。噴霧する液剤のコストと除菌消臭効果を考え、どこに設置し、どのようなタイミングでどのくらい噴霧すれば最適なのか。1カ月かけ何度もトライアルを行い、タイマー設定を決めていった。実際に、臭気鑑定士を呼び、噴霧前後での消臭効果も確かめた。こうした努力の末、無事に108カ所の導入が終わり、2019年3月末についに稼働が始まった。

現在、中込は小売では大手の家具販売店を担当。全国の店舗にA2Careを導入してもらい、一般消費者に向けた販売を行っている。
「A2Careは1年中様々な用途で安全安心に使っていただける商品です。冬場であればインフルエンザなどの感染症対策として、春先は花粉症対策など、季節ごとにPOPを作り、売り場作りを考えています。また、商品の配置もレジ横に置いてもらうような提案もその都度行います。小売の場合はお客様の反応がじかにわかりますし、売上にも反映されますので、業務用とはまた違った面白さがあります。」
現在所属するチームは、新規ビジネスを扱っているだけに、販売戦略や市場開拓を含め、ゼロから作っていかなければならない。前例がない分苦労する部分もあるが、それだけに努力したものが形になり、ビジネスとして効果が目に見えたときには大きなやりがいを感じられると中込は言う。
「除菌消臭剤の市場は競合他社も多くかなりシビアな世界ですが、その中でもネットや広告戦略にも力を入れて、A2Careで国内シェア5％を取っていくというのが当面の目標です。また、私自身としては、このA2Careの事例をもとに、別の商材でも同じように新規のプロジェクトを進め、ビジネスとして立ち上げて成功まで導いていけたらと思っています。」
全日空商事の強みは、ANAという大きな看板を背負って営業活動ができること。それは全日空商事以外にはできない。しかも、これまで先輩たちが築いてきた数々の実績や安心安全などに対する信頼もある。そうした中で営業活動ができるのは恵まれているし、全日空商事を選んで良かったと中込は語る。A2Careが多くの場所で使われ、必要とする世界中の人々に届けられるようになるまで、中込の挑戦は続いていく。