ゴールデンウィークの休日明け、出社した私はパソコンに表示された販売状況を見て、目を疑った。5月1日に売り出したばかりのゴルフウェアが、サイズによっては早くも在庫がゼロになっているではないか。3カ月かけて売り切る戦略を立てて企画開発した商品が、たった数日で売り切れるとはまさに想定外のことだった。

私はインターネットのショッピングサイト「astyle」で扱う通信販売の商品を仕入れるバイヤーだ。商品の仕入れを行う際に、私が常に考えていることは「お客様にどれだけ喜んでもらえるか」ということだ。お客様にお買い上げいただくからには、買ってよかったと満足していただきたい。通信販売という業態上、お客様の顔を直接見ることはできないが、お客様が商品を選んでいる顔や使っている場面を想像しながら、長く使っていただける品を選定している。

通信販売部で手掛けているショッピングサイトなどは、ANAのマイレージポイントが利用でき、貯められることもできるため、ANAをよく利用する30~50代男性のビジネスパーソンが多い。このときのゴルフウェアも、そうした主要ターゲットに向けて、フランスのスポーツブランドL社の製品をオリジナル商品として企画開発したものだった。襟元を日本のターゲット層向けにポロ襟へとアレンジしファッション性を高め、価格を従来品よりやや低目に設定することで、これまでにない、お客様に驚きを与える商品に仕上がった。L社を選んだのは、当時ANAが契約していた、人気の女子プロゴルファーが着ているブランドだったこともある。さりげなくANAを感じさせる絶妙のさじ加減だ。

ゴルフウェアは「SKY SHOP」やショッピングサイトで売り出された。当然、売れるつもりで投入したのだが、この商品の場合は想定以上の売れ行きだった。生産が追いつかず納品までに時間が掛かり、在庫がゼロの状態が長く続いてしまった。上司からは見通しが甘い、しっかりと先を見越し仮説を立てたのかと叱責された。売れ過ぎて叱られるのも複雑な気分だったが、売れ行きによって柔軟に対応できるように対策を打っておくべきだったのだ。数をもっと用意していれば、より多くのお客様に買っていただくことができたはずだと後悔の念に駆られた。お客様のニーズは常に変化しており、その動向をいかに把握するか、一歩先に情報を掴んで商品を提供することの重要さを改めて噛み締めた。

私は「お客様に喜んでもらう仕事」をしたくてバイヤーを志した。自分が目を付けた商品、工夫して開発した商品が、お客様に評価され売れることほどうれしいことはない。この喜びが次への活力となる。だが、ときには恐ろしいくらい売れないこともある。自らが仕入れた商品のうち5割以上ヒットさせなければ、プロのバイヤーとは呼べないと私は考えている。そのためにも、色々なことに興味を持ち、自分の頭でしっかり考え抜くことが大切だ。お客様の笑顔こそが、私を突き動かす原動力となり、厳しい壁も乗り越えて行ける。