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入社3年目の秋、ANAの航空機に搭載されているランプ類を、安全性・品質向上の観点から一斉に交換することになった。「安全が最優先ですから、技術的に譲れない一線があります。それを踏まえて価格交渉してください」。いつになく厳しい口調でこう話したANAの技術担当者の言葉が今でも忘れられない。自分たちも航空機の安全の一翼を担っているのだと、改めて身の引き締まる思いがしたものだ。
私は現在、2009年4月から始まった戦略購買プロジェクトのメンバーとして、先輩社員とともに、ロサンゼルスに駐在している。プロジェクトメンバーは米国全日空商事の社員1名と我々2名の3名だ。もうすぐ4年目になる私にとって、プロジェクトへの抜擢は念願であり、自然と力も入った。ナット、ボルト、ベアリング、ランプといった消耗品から、ランディングギアのアクチュエーターなど航空機ならではの部品も含めて、新規サプライヤーの開拓をするとともに、購買に関わる条件交渉を進めている。
ANAの航空機の大半は米国のボーイング社製だが、そこで使用される部品の多くはFAA(米国連邦航空局)の承認を得たものでなければならない。このためボーイング社製の機体に使用する航空機部品のサプライヤーは、米国に集まる。これまでは特定のサプライヤーを中心に取引を行ってきたが、より安価でタイムリーに部品を手に入れるためには、米国に身を置いて、多様な取引先と交渉する必要がある。

米国に来て直接交渉をしたことで、航空機部品市場の奥深さを肌で感じ、知ることができた。サプライヤーごとに強みを持つポイントが異なるので、これを上手く活用すれば、これまでよりずっとリーズナブルな価格で部品が手に入る。サプライヤーは180社以上もあり、購買交渉には様々な可能性が拓けている。その可能性に胸が躍る。
今回の戦略購買プロジェクトには、前例がまったくない。しかも、米国に乗り込んでゼロから出発しているので分からないことだらけの中、手探りで一歩ずつ進んでいる。私にとっては海外で暮らすのも初めて。英語も入社後必要に迫られて覚えただけで、得意なわけでもない。それでも、航空機部品の調達コストを低下させることは、ANAグループの経営にとって極めて重要で、挑戦しがいのあるミッションだ。困難なハードルに挑むときほど燃えてくる。ANAグループを代表して交渉している責任感を胸に、安全な製品提供はもちろん、価格と納期に納得のいく新しい取引先をどんどん開拓していきたい。


