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機内販売の売上を因数分解すると、旅客数×キャッチ率×客単価となる。このデータを分析していた私の頭に、一つの仮説が浮かび上がった。『ファースト・ビジネスクラスを利用されるお客さまにターゲットを絞った商品を新規に投入することで、キャッチ率が高まり、売上を伸ばすことができるのではないか』という仮説だ。すぐにこのコンセプトを、国際線の機内販売商品の仕入れを担当するバイヤーに伝えたところ、商品の候補として宝飾品で著名な高級ブランドB社のスキンケア商品を推薦してきた。
「なるほど、これか」とある種の感慨を覚えた。B社は国内では宝飾品が著名だが、海外ではスキンケア商品を販売している。数年前、私がまだ成田空港の免税品店のバイヤーを務めていたとき、フランス・カンヌの国際見本市で見かけたことがあった。B社のスキンケア商品は、他の3品の商品とともにファースト・ビジネスクラスのお客さま限定商品として、2009年11月から機内で販売され、順調に売り上げを伸ばしている。
この件とは直接関係ないが、B社とは浅からぬ縁がある。成田空港の免税品店を担当していたときのこと、空港のリューアルに合わせてB社のテナントを誘致し、新規に立ち上げたことがあった。高額品を在庫として持つことになるため、リスクも大きなビジネスだったが、これまでのANAのターミナルにはない魅力的なブランドであり、新たなビジネスモデルが生まれるのではないかという想いから、是が非でもテナントを出店させたかったのだ。様々な障害を乗り越え挑戦し、形として残すことができたという当時の充実感が、今となっては思い出深い。

職種や立場にもよるが、私が現在担当している機内販売のマーケティングにおいては、可能なことの中からベストを探すのではなく、真のベストを追求すべきだと考えている。お客さまの満足を高めるサービスとは何かを第一に考えることが、結果として利益にもつながる。もちろん、いざ実行しようとすれば資金、マンパワー、時間とあらゆる面で高いハードルが待ち構えている。だが、それを乗り越えていくことにこそ、ビジネスの面白さ、醍醐味があるのだ。楽ではない道だからこそ仕事の喜びも利益もついて来る。そして、次の世代を担う若手社員たちに、私が蓄積してきた叡智を伝え、個性をぶつけ合って仕事をしていきたい。これからも自分の生きた証として、会社にいろいろなものを残し、貢献していくことが私の使命なのである。


