「君はいつも幸運を呼び寄せるね」。ビジネスパートナーであるG社の老練な米国人社長から、笑顔でこう言われた。もちろん、このラッキーを手に入れるまでに、根を詰めたギリギリの交渉をしてきたことは彼も知っている。半導体ビジネスの数々の修羅場をくぐり抜けてきた社長ならではの褒め言葉なのだろう。私はその言葉を、ありがたく頂戴した。

G社は上海に拠点を置く半導体の組立受託会社だ。全日空商事はG社の販売代理店として、日本と米国で営業活動を行っている。日本の半導体メーカーから半導体の頭脳となるチップの提供を受けG社で組み立て、製品となった半導体を再び半導体メーカーに販売する。この一連の流れをスムースに運ぶために全日空商事が仲介を担っているのだ。

2006年のこと、日本の半導体メーカーであるA社から、ふだんの倍量の注文が舞い込んできた。この背景にはA社の顧客である台湾のパソコンメーカーの急成長があった。慌ててG社に問い合わせたが、生産ラインを増設しないと要請には応えられないという。だが、ライン増設には10億円もの設備投資が必要となる。金融機関からの借り入れ手続きを踏んでいたのでは、A社の要望する期限にはとても間に合わない。どうしたらA社からの要望に応えられるのか…私は頭を抱えたまま、動けなくなってしまった。

クライアントと向き合うとき、私にはいつも大切にしていることがある。『クライアントが困っていれば、自分の痛みとして受け止める』ことだ。深く真剣に考え抜けば、どんなことでも必ず、何らかの手立てが見つかる。だが、そこで諦めてしまえば、クライアントから信頼を得ることはできず、自分の成長にもつながらない。困難を好奇心に変えて、学び、工夫することで、初めて道が拓け、クライアントとの信頼関係は確かなものになる。そして、自分も成長することができるのだ。

日夜考え抜いた結果、私の頭の中にあるスキームが浮かんだ。それは、全日空商事がG社に設備資金10億円を融資し、A社が2年間の購買保証を付けるというもの。早速、両社に提案したところ、確かな手応えを感じた。当時の私は融資案件の経験が少なく、財務の知識も乏しいものだったが、資料を必死で集め猛勉強し、英文の契約書を作成。細かい取引条件をG社、A社と交渉しながら詰めていった。

こうして、ビジネスは幸いにも大成功を収め、私は幸運を呼び寄せる男と呼ばれるようになった。だが、幸運の女神は誰にでも微笑むのではない。努力した者にだけ微笑むものだ。次の成長戦略をどう描くのか。最近取り扱いを始めたLED関連商材にも、工夫次第で大きな商機があるのではないかと密かに考えている。クライアントが抱えている新たな問題を、解決するため、今日もまた考え抜いていくのだ。