これまでにないマイレージ提携先を確立し、新たな利用者を取り込め。大きく広がっていくマイレージサービス事業に、可能性を見いだし全力を傾ける。 富永 源太郎

prologue

ANAのマイレージサービス『ANAマイレージクラブ』。今や、会員の約半数がフライト以外でマイルを獲得しており、生活のあらゆるシーンで活用されるアイテムとなっている。全日空商事の広告メディア部では、ANAの当該部門と密接に連携。航空会社以外の企業に対して『ANAマイレージクラブ』の提携交渉を行っている。

2009年夏。ANAの今後の成長を占う重要なプロジェクトが、大詰めを迎えていた。大手家電量販店のクレジットカードに、ANAのマイレージ機能を開放する一体型カード発行のプロジェクト。家電量販店の利用者をANAに取り込み、またカード決済による収入増も期待できる。ANAとしては、新たな収益の柱として成長させたいと考えている案件だ。富永は、ANAの担当者や全日空商事の上司と共にプロジェクトに参加。実務面を一手に担っていた。このプロジェクトには、家電量販店やクレジットカード会社、電子マネーサービスの運営会社など様々な企業が関わる。それら関係者の意見をまとめ、調整していくことが富永に求められた。富永は、プロジェクトを円滑に運営すべく各社との協議を重ねる。しかし、システムの連携という大きなハードルが富永の行く手を阻むのであった。

各種のデータベースを連携させるシステムが必要となった。

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新たに発行されるクレジットカードは、家電量販店のポイント及びマイル加算や、ポイントとマイルの交換、電子マネーの使用によるポイント加算など、一体型カードとしての様々な機能が付加される予定だ。それを実現するために必要な条件は「ポイント」「電子マネー」「マイレージ」の互換性であり、3つの会員番号のデータベースを新たに紐付ける作業が発生することになる。

「マイルと電子マネーを交換する仕組みについて、確認させてください」富永は、マイレージサービスに詳しいコールセンターの担当者などから、情報収集をスタートさせた。すると3つのデータベースを連携させるためには、現状のシステムを見直す必要があることが分かった。それを受けて、プロジェクトチームはデータベースの運用について協議。電子マネーの扱いが議論の中心だったため、電子マネーサービスの運営会社がシステム改修のコストを負担することになったが、その費用は数千万円に上る可能性があった。

サービスの質か、コストか。交渉が続く。

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「協力はしたいのですが、こちらとしてもあまり負担することはできません」電子マネーサービスの運営会社からは、求められているサービスレベルを実現するにはシステムの改修費用が多額のため費用負担できないという提案がなされた。確かに、電子マネーサービスの運営会社に多くの負担を強いることは現実的に厳しく、プロジェクトチームとしても可能な限りコストをかけずに改修したいというのが総意だった。しかし、カード発行後のことを考えると、サービスレベルを下げるわけにはいかない。

「もっと他のアプローチ方法はないのか」富永は、データベースやシステム改修に関する情報を徹底的に集め、要点を洗い出していく。その結果、コストの削減とサービスレベルの維持を両立できることが可能だと明らかとなった。その後、何度か交渉の場が設けられ、「あなた方の協力がなければ、このカードを発行することはできません」というANAサイドの強いプッシュがあり、電子マネーサービスの運営会社は提示した条件でシステム改修に向けて動き出した。

新たなカードが全ての端末で機能する、その確証はない。

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システム改修の問題をクリアした富永であったが、もう一つ気掛かりなことがあった。新しく発行したカードを、店舗の読み取り端末が正確に認識できるか、という問題だ。企業や店舗によって使用されている端末が異なるため、新しいカードが機能しない可能性もある。富永は、端末ごとに店舗のリストを作成し、祈る思いでテストカードを送付。その結果を待った。翌日から、富永のもとにテストの結果が報告される。1週間後には、全ての結果が届いた。「すべて異常なし」それを確認した富永は、ようやく安堵の表情を浮かべた。

サービス開始が目前に迫り、富永は最後の準備に追われた。家電量販店の店頭にはポスターを掲示し、ANAの機内誌など各種メディアを通じて大々的に告知した。家電量販店の担当者からは「良いカードができましたね」と喜ばれ、上司からは「いよいよだな」と発破をかけられた。「これからが本番だ」富永は、決意も新たにその日を迎えたのだった。

Epilogue

先行受付が始まり、反響が気になった富永は、自ら家電量販店の店舗へ足を運んだ。そこには、申し込みを希望する人が列を成す光景が広がっていた。その後、クレジットカード会社からは想定していた通りの加入者数を獲得しているという報告があり、富永は確かな手応えを感じた。

このプロジェクトを経験した富永は、全日空商事が持つ提携パートナーのネットワークに、今後の同社の飛躍を見出そうとしている。一体型カードはほんの一例にすぎず、ANAマイレージサービスの可能性は大きく広がっているのだ。新しいビジネスの芽を見つけ、育て、花開かせてみたい。そんな想いを抱きながら、富永は日々の仕事に全力を傾けている。

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